新たなコロナ派生型「XBB.1.5」の特徴は アメリカで流行

新型コロナウイルスの新たな派生型「XBB.1.5」がアメリカで急速に広まっており、懸念の声が出ている。

この派生型はイギリスなどでも感染例が記録されている。どんな特徴があるのか。

■XBB.1.5の特徴は

XBB.1.5は、世界的に大流行しているオミクロン変異株から新たに派生したものだ。これまでに出現したアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ変異株に連なっている。

オミクロン株は、2021年後半の出現以来、それまでのすべての変異株を上回る感染力を見せている。多くの派生型が生まれており、当初のオミクロン株より感染力がさらに強まっている。

XBB.1.5による症状は、これまでのオミクロン株と似ている様子だが、まだ確認はできていない。ほとんどの場合、風邪のような症状がみられる。

■感染力がより強く危険なのか

XBB.1.5は、昨年9月にイギリスで広がり始めたXBBから進化した。保健当局は「懸念される変異株」には分類していない。

XBBは、人体の免疫に勝りやすいように変異していた。だがそれにより、人間の細胞に対する感染力は低下した。

英大学インペリアル・コレッジ・ロンドンのウェンディ・バークリー教授によると、XBB.1.5ではF486Pと呼ばれる変異によって、細胞への感染力を回復しつつ、免疫系の攻撃をかわす能力が高まっている。拡散しやすくなっているのは、そのためだ。

こうした変化は、ウイルスにとって進化の「踏み石」のようなものだと、バークリー教授は説明する。ウイルスが、人体の防衛メカニズムを回避する新たな方法を見つけようとしているのだという。

世界保健機関(WHO)の科学者たちは4日、XBB.1.5について、これまで確認された他の変異株よりも「感染者数増加の優位性」があると認めた。

ただし、これまでのオミクロン変異株よりも深刻で有害だと示すものはないという。

WHOは患者への影響を詳しく探るため、研究機関での分析や病院のデータ、感染率などを注視していくとしている。

■どこで広がっているのか

アメリカでは新型ウイルス感染者の40%以上がXBB.1.5によるものと推定されており、この派生型が一大勢力となっている。

昨年12月の初めには4%だった。つまり短期間で、オミクロン株の他の派生形を素早く追い抜いたことになる。

アメリカ各地ではここ数週間、新型ウイルスによる入院が増加している。

英健康安全保障庁は来週、国内で広がっている変異株に関する報告書を公表する予定で、XBB.1.5について言及する可能性がある。

■イギリスでも流行するのか

確実なことは言えないが、可能性は高そうだ。

イギリスでは昨年、オミクロン株感染の波が5回発生した。感染の急増は今後も避けられない。

ケンブリッジのサンガー研究所がまとめた昨年12月17日までの1週間のデータからは、イギリス国内の感染者の内、25人に1人がXBB.1.5に感染している状況が浮かび上がった。

しかし、これはわずか9つのサンプルに基づく推計で、感染拡大の状況をよりよく把握するにはまだ1~2週間が必要だ。

前出のバークリー教授は、この派生型がイギリスでも流行すると「予想している」として、その場合は入院患者が増えることになると述べた。

英イースト・アングリア大学のポール・ハンター教授は、「確率的にはXBB.1.5が今月これから、イギリスで(感染の)波を引き起こすことになるだろう。しかし、確実ではない」と述べた。

NHSイングランドは、新型ウイルスとインフルエンザが同時流行する「ツインデミック」の恐れが現実となっていると指摘。すでにぎりぎりの状態だった国民保健サービス(NHS)に、さらなる負担がかかっているとしている。

■専門家は心配しているのか

バークリー教授によると、ワクチンによって得られた重症化予防効果をXBB.1.5が「打破する」と「示す材料はない」。そのため、イギリス国民全般については特に心配していないという。

ただ、ワクチン接種の効果が低い免疫不全者など、抵抗力が弱い人たちへの影響は懸念している。

一方、ハンター教授は、XBB.1.5の毒性が強いという証拠は目にしていないと話した。これは、既存のオミクロン変異株より「入院や死亡」の危険性は高くないことを示唆している。

「変異株が発生するかもしれないと皆が中国に注目している中で、XBB.1.5がアメリカで出現したのは皮肉だ」と同教授は付け加えた。

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のデイヴィッド・ヘイマン教授は、この最新の派生型については、まだ多くのことが分かっていないと説明。

だが、ワクチン接種者や感染経験者の比率が高いイギリスなどの国では、大きな問題が起こる恐れは低いと述べた。

ヘイマン教授が懸念するのはむしろ、ワクチン接種率が低く、長期のロックダウンで自然免疫もほとんどない中国などの国での影響だ。

「免疫のない人の間でこの派生型がどう振る舞うのかを知るために、中国は感染者の臨床情報を共有する必要がある」とヘイマン教授は話した。

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