ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は7日、核戦争の脅威が高まっていると発言した。一方で、ロシアは「狂って」はおらず、核兵器を最初に使うことはないと述べた。
ロシアの人権理事会の会合にビデオリンクで出席したプーチン大統領は、自国が攻撃された時のみ大量破壊兵器を使用すると話した。また、ウクライナでの戦争は「長い道のり」になるだろうと述べた。
西側諸国は、プーチン氏が当初、侵攻を迅速に終わらせることを計画していたとみている。
今年2月にウクライナ侵攻を開始して以降、ロシアに核兵器を使用できる能力があるか、大きな注目が集まっている。
プーチン氏は会合で、「そのような(核の)脅威が高まっていることを隠しておくのは間違っている」と話した。
また、「我々は狂ったわけではない。核兵器が何なのか分かっている」と述べ、「この武器をカミソリのように振り回して、世界中を走り回るわけではない」と語った。
プーチン氏は、ロシアが世界で最も近代的で高度な核兵器を持っていると主張。アメリカについては、核兵器を他国に配備することで一歩踏み込んでいると、戦略を比較した。
「ロシアは戦術核を含めた核兵器を他国の領土に置いていないが、アメリカ人はそうしている。トルコや、多くの欧州各国に」
プーチン氏は先に、ロシアの核の基本方針では、核兵器を防衛目的でしか使えないと語っていた。
■ウクライナ侵攻は「長い道のり」
プーチン氏は、ウクライナを数日で攻略し勝利を宣言する計画が失敗したのを認めた様子で、戦争が「長い道のり」になるだろうと話した。
一方で、ロシアが一方的に併合を宣言した4州などに触れ、これまでの成果は「非常に大きい」と述べた。
特に、ウクライナ南部からロシア南西部にかけて広がるアゾフ海一帯を制圧し、「ロシアの内海」にしたのだと主張。ピョートル1世(ピョートル大帝)の領土拡大の野心と同じだと付け加えた。
ピョートル1世は17世紀末~18世紀のロシア皇帝で、ロシア近代化のほかに大国化を推進。大北方戦争でスウェーデンと長年にわたり領土戦争を繰り広げた。プーチン氏は、自らをピョートル大帝になぞらえている。
だが、ロシアはヘルソン、ザポリッジャ、ルハンスク、ドネツクの4州の併合を宣言したものの、いずれの州も完全には掌握できていない。
ロシア軍は11月、唯一占領していた州都であるヘルソンから撤退を余儀なくされた。
前線から撤退して以降、ロシア軍は大規模な空爆でウクライナ全土の送電網を破壊している。
この空爆により、ウクライナのエネルギー・インフラは広範囲で損傷し、多くの人々が数時間、時には数日にわたり、零下まで下がる気温の中、電気や暖房のない暮らしを強いられている。
首都キーウのヴィタリ・クリチェンコ市長は、停電に見舞われている同市が「大惨事」に見舞われる可能性があると警告した。
クリチェンコ市長はロイター通信の取材に対し、「キーウは電気も水も、暖房も止まる可能性がある。気温の低さから市内の住宅に住めないとなれば、ハリウッド映画のような大惨事が起こる可能性がある」と述べた。
市内には現在、暖房シェルターが設置されているが、市長によれば住民の数に対して不十分だという。その上で、状況が悪化した時のために避難の準備をするべきだと訴えた。
■戦争懐疑派を事前に排除
こうした中ロシアでは、人権理事会の前に、プーチン氏の侵攻を批判する可能性のあるものは排除された。
7日の会議に先立ち、戦争に疑念を表明していた理事10人が解任され、戦争賛成派が補充された。
ロシアの独立系ニュースサイト「Verstka」によると、会合で話し合われたテーマも事前に綿密に調べられていたという。
核兵器、特にウクライナの戦場で放たれるかもしれない「戦術核」について、いつ使用される可能性があるのかといったロシアの核ドクトリンがここ数週間、綿密に調査されている。
大規模な破壊を目的とする「戦略核」兵器とは対照的に、戦術核は戦闘で使用するものを指す。
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