日本の宇宙ベンチャー「DigitalBlast(デジタルブラスト)」(東京都千代田区)が、独自の商用宇宙ステーション建設を計画していることがわかった。米国では民間企業数社が建設計画を公表しているが、日本企業による構想が明らかになるのは初めて。
12日に東京都内で開催される宇宙関連イベントで同社が発表する。建設費用は総額3000億~5000億円と見積もっており、協力企業などを募る。国際宇宙ステーション(ISS)は2030年で運用を終える見通しで、「ポストISS」を見据えて30年以降の完成を目指す。
同社によると、新ステーションは地球低軌道(高度400~500キロ)を周回。ISSの日本実験棟「きぼう」(長さ約11メートル、直径約4メートル)の7割程度の大きさの円筒形のモジュール(構成パーツ)を三つ組み合わせた設計にする。30年までに一つ目のモジュールを打ち上げる計画だ。
三つのモジュールは、実験棟▽居住機能などを備えるコアモジュール▽エンターテインメント棟――とする。実験棟は官民が宇宙実験の場として有償利用できる。エンタメ棟は、宇宙と地上をつなぎ、定額で動画などの配信を地上で受けられるサブスクリプションサービスを展開する。
運用経費は年間6000億円と試算しており、新ステーションを活用した事業から捻出する。将来的には小惑星探査機などの発着点として活用し、持ち帰った試料の貯蔵や実験場所としての利用も想定している。
同社はこれまで、人工的に重力を発生させて宇宙で植物を栽培する実験装置の開発などに取り組んだ。11月には宇宙旅行事業などを手がける米宇宙ベンチャー「アクシオムスペース」と協力関係も築いた。
デジタルブラストの堀口真吾・最高経営責任者(CEO)は「日本の民間会社が宇宙ステーションを建設することで、国内の宇宙利用の自由度が上がる。日本が保有している技術も生かせるはずだ」と意義を強調した。
世界の宇宙ステーションはISSが中心だったが、老朽化が進んだことなどを理由に、米国は30年で運用を終える計画で、日本も追随した。一方、中国は11月に独自の宇宙ステーション「天宮」を完成させた。米国でも「ブルーオリジン」など複数の宇宙企業が20年代後半に新たな商用宇宙ステーションを建設する予定だ。
文部科学省の担当者は「日本でも民間企業が主導して宇宙ステーションを建設する動きが出たことを歓迎したい。宇宙利用が活性化されることを期待している」と話した。
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