政府のデジタル市場競争会議の作業部会は9日、スマートフォンの基本ソフト(OS)を提供する巨大IT企業への規制案を取りまとめた。米アップルなどを念頭にスマートフォンなどでアプリの入手に使う「アプリストア」について、他社のサービスも使えるように求める方針。松野博一官房長官を議長とするデジタル市場競争会議を近く開いて正式決定する。スマホ利用者にとってはアプリの価格低下につながる可能性がある。
国内のスマホのOS市場はアップルとグーグルの米IT大手2社の寡占状態にあり、この2社が自社のサービスをそれぞれのOS上で優遇すれば、市場競争が働かなくなる懸念がある。
アプリストアについてアップルのiPhone(アイフォーン)では、有害なアプリを排除するとの理由から同社が提供する「アップストア」しか利用が認められていない。アップルの試算ではアップストア経由の売上高(2022年)は前年比29%増の1兆1230億ドル(約156兆円)に上る。アプリ開発者などはアップルに最大30%の手数料を支払っており、競争原理が働かないため割高との指摘が出ている。
グーグルは自社以外のアプリストアを認めているが、公正取引委員会の調査では97%超が自社ストア経由で流通しており、競争は限定的といえる。
このため規制案では、自社のアプリストア以外でのアプリ流通を容認し、競争を促してサービスの多様化や手数料引き下げにつなげたい考え。
巨大IT企業への規制強化は世界的な潮流となっている。欧州連合(EU)は22年に、自社サービスの利用を強制したり優遇したりする行為を禁止する「デジタル市場法」(DMA)を制定した。
日本も21年にオンラインモールやアプリストアで行う事業者との取引の透明化を求める初のルール「デジタルプラットフォーム取引透明化法」を施行した。グーグルなどに取引条件の開示や契約変更の事前通知を求める内容で、企業側に自主規制を促す色合いが強い。一方、今回の規制案は競争を阻害する要因をあらかじめ明記して禁じる事前規制と位置付けられ、巨大IT企業の独占回避に向けて一歩踏み込んだ形だ。
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