高騰する鶏卵の価格「供給戻るのは秋以降」 食品業者からも悲鳴

 高病原性鳥インフルエンザの流行で鶏卵価格が高騰している。卵卸売り大手「JA全農たまご」(東京都)が公表する相場では、九州エリアの市場での標準取引価格(Mサイズ)は8日時点で1キロ当たり345円で、2022年3月(189円)の約1・8倍に急騰。23年3月に入っても福岡市の養鶏場などでは鳥インフルエンザで採卵鶏が殺処分されており、「供給量が元に戻るのは早くても今秋以降だろう」(鶏卵業界関係者)という。

 福岡県畜産課によると、ロシアのウクライナ侵攻に伴うトウモロコシなどの飼料価格高騰の影響で、養鶏場が飼養羽数を少なくしていた中、鳥インフルエンザが追い打ちをかけた。鶏卵業界関係者は「九州は中四国や関西に出荷していたが、供給減で九州内で消費されるようになった。しかし、鶏卵が不足している地域から九州に買い付けに来ていることも高値に影響している」と話す。

 県内では全74養鶏場で採卵鶏計約273万羽(22年2月現在)を飼育している。23年3月2日に鳥インフルエンザが確認された福岡市の養鶏場では約24万3000羽を殺処分。22年12月に確認された糸島市の養鶏場の採卵鶏約5万3000羽も合わせると、今季は県内飼養数の約1割が殺処分されたことになる。養鶏場の防疫措置が終わった後、ヒヨコの育成などで鶏卵を供給できるようになるまで通常は約半年かかるとされ、鶏卵の高値の長期化は避けられない状況だという。

 さらに新潟県胎内市でも23年3月6日、鳥インフルエンザで採卵鶏約68万羽の殺処分が始まった。鶏卵業界関係者は「外食産業やコンビニエンスストアなどでは鶏卵を使った商品の一部の販売休止やメニューの改廃が起きており、将来的に鶏卵の需要が元通りになるか分からない」とまで懸念する。

 鶏卵を使う食品業者からは価格高騰や鶏卵不足に悲鳴が上がる。焼き菓子「ダックワーズ」で知られる「フランス菓子16区」(福岡市中央区)の三嶋隆夫オーナーシェフ(78)は「高値だけでなく、卵自体が手に入らなくなるのではという不安がある。『卵を分けてほしい』と相談してくる同業者もいる」と話す。

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