臓器移植法に基づく角膜移植の件数が、新型コロナウイルス流行後、2年連続で年1000件を下回っている。昨年度は過去最低の814件で流行前の3~5割減だった。ドナー(提供者)が感染していないか確認する必要が生じたり、病床逼迫(ひっぱく)で手術が延期されたりした影響だといい、関係者は「治療時期を逃す患者が増える恐れがある」と危機感を募らせている。
角膜を除く臓器移植の合計件数は年300~400件台にとどまるが、角膜は脳死下だけでなく心臓が止まった後でも提供できるため、国内で提供された角膜の移植件数は、1998年度以降は年1000件超で推移。2008~10年度は1600件台だった。
それが、コロナ流行後の20年度は917件まで減少。今年度上半期も381件と同様の傾向が続く。一方、日本アイバンク協会によると、角膜移植を待つ人は全国に約2000人いる。
厚生労働省は20年4月、ドナー候補者にPCR検査を行い、陽性だった場合は臓器移植に用いないことなどを求める通知を出した。日本アイバンク協会によると、角膜提供の意思を示していた人が自宅で亡くなった時に検査できず、提供を断念した例もあるという。
角膜移植に積極的な東京歯科大市川総合病院(千葉県市川市)の島崎潤・眼科部長は「当院での角膜移植の待機期間は、従来は約半年だったが、最近は3倍に延びている。治療が遅れると失明のリスクも高まる。提供の意思を無駄にしないよう、しっかり検査して移植につなげる体制作りや啓発が必要だ」と訴える。
◆角膜移植=角膜は黒目表面の透明な組織。白く濁るなどし、著しい視力低下や失明の恐れがある場合に、亡くなった人から提供された透明な角膜と取り換える。臓器移植法に基づき、国内から提供される角膜は、国の許可を受けたアイバンクが仲介する。海外から輸入する例もあるが、国際移植学会の宣言では、臓器移植は自国内の提供が原則とされる。
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