日本の新型コロナウイルスの研究が低調だ。日本からの関連の研究論文は数でも質でも、G7(主要7カ国)で3年連続で最下位の見通しだ。研究力の低下は、医薬品の開発や科学的知見にもとづいた政策判断を難しくする。政府の有識者会議(座長・永井良三自治医科大学長)が6月にまとめた報告書でも、重要な課題として指摘している。
科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センターの辻真博フェローによる調査では、国・地域別の新型コロナ関連の日本からの研究論文数は、2020年は1379本で16位、21年は3551本で14位、22年(5月時点)は1600本で12位。1位は3年連続で米国、2位と3位は中国と英国が入れ替わりながら順位を維持している。アジアでは他にインドが20年に5位で、以降も上位にとどまっている。
論文の数だけでなく質でみても、存在感は薄い。「ネイチャー」や「サイエンス」、「ランセット」、「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」、「米医師会雑誌」といった医学に関する著名な5誌に掲載された論文だけに絞ると、日本は20年に18位、21年に30位と下がった。
研究者の数や環境など差は多岐にわたるが、特に資金力が顕著だ。感染症研究に米国立保健研究所(NIH)が年間約6千億円をつけるのに対し、日本の医療研究の司令塔役となる日本医療研究開発機構(AMED)は年間約90億円と、67分の1にとどまる。
国内のほかの医療分野の研究費と比べても、感染症研究は見劣りする。がんには年間約180億円、iPS細胞などを使った再生医療には年間約160億円が投じられている。
JSTの別の視点からの調査でも似た傾向がうかがえる。論文の内容を病気ごとに分類し、日本が全体のどれぐらいを占めているか(占有率、15~19年)をみても、がんは3位、循環器は7位なのに対し、感染症は12位に下がっていた。
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