ロシア、イラン製兵器に依存 キーウ攻撃で無人機、ミサイルも輸入か

 ウクライナ侵攻を続けるロシアは17日、首都キーウ(キエフ)などを攻撃した際にイラン製とみられる無人機を投入した。ロシアはイラン製ミサイルの輸入も検討していると報じられており、兵器購入でイランへの依存を深める実態が浮き彫りになっている。

 ウクライナメディアの「ウクラインスカ・プラウダ」によると、同国の空軍報道官は16日夜から17日昼までに、43機の無人機が領空を侵犯してきたが、37機を撃墜したと報告。17日夜には更に8機を撃ち落としたことも明かした。しかし17日のキーウでは無人機が集合住宅に突っ込むなどして、妊娠中の女性が犠牲になっており、全土で少なくとも8人が死亡した。

 ロシア、イランの両政府は繰り返し否定しているが、ロシア軍は「シャヘド136」などイラン製無人機を購入している模様だ。機体を塗り直し、ロシア語で使うキリル文字を表記したうえで、9月からウクライナの戦線に投入し、民間インフラや集合住宅などを攻撃しているとみられる。

 米シンクタンク「戦争研究所」は13日の情勢報告で、ウクライナに侵攻しているロシアの地上軍が戦闘能力を低下させていることから、ロシアが今後もイラン製無人機による攻撃に力を入れていく公算が大きいと分析している。

 ロシアではイランの存在感が増している節が見受けられる。ウクライナ国内でロシアへの抵抗運動を試みる団体「レジスタンス・センター」は17日、ロシアが実効支配しているウクライナ南部ヘルソン州で20人近くのイラン人が確認されたと報告。投稿アプリ「テレグラム」への書き込みでは、これらのイラン人が自国製無人機の操縦方法をロシア側に指導していると指摘した。

 無人機攻撃の被害が広がる中、キーウのイラン大使館前では17日、ウクライナの国旗を掲げた人たちが抗議の声をあげた。ウクライナ外務省も声明で「ウクライナを征服しようとする戦争で、市民を殺害する兵器を提供していることは、イランをロシアによる侵略の罪や戦争犯罪の共犯者にさせている」と非難。ウクライナ最高会議(議会)の与党「人民のしもべ」の幹部アラハミア議員は、ロシアへの兵器輸送を妨害する狙いで、イランの周辺国に協力を呼びかける考えを示している。

 ロシアが無人機をはじめとしたイラン製兵器への依存を深めているのは、兵器全般が著しく枯渇しているためだとみられる。

 ウクライナ侵攻が2月に始まった直後に、欧米諸国や日本はハイテク製品の対露輸出規制を発動した。今月14日に米財務省が出した報告書は、ロシアでは武器生産に欠かせない半導体の輸入が滞り、極超音速弾道ミサイルがほぼ製造停止に追い込まれたと指摘。ウクライナのレズニコフ国防相もロシアが保有していたミサイルの3分の2を既に使ったとの見解を明かしている。

 ロシアはイラン製ミサイルの購入に向けても調整を急いでいる模様だ。16日付の米紙ワシントン・ポスト(電子版)は、米政府筋などの話として、イラン代表団が9月中旬にロシアを訪れ、2種類の地対地ミサイル「ファテフ110」「ゾルファガール」の輸出に関する協議に臨んだと報じた。

 射程はファテフ110が200キロだが、ゾルファガールは700キロと伝えられており、ロシアが購入すれば、ウクライナの戦線に投入していくのは確実だ。ポスト紙は「テヘラン(イラン)からの兵器輸入の増加は、ロシアが2月に侵攻を始めて以来被ってきた大規模な兵器の損失を穴埋めできる」と指摘している。

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