政府の節電要請、家計・企業に負担も 構造問題浮き彫り

政府が今夏に7年ぶりに全国規模の節電要請の実施などの対策を決めたことは電力供給不安の構造問題を浮き彫りにした。原発の再稼働は進まず、再生可能エネルギーとして普及が進んできた太陽光発電は足元で天候に発電量が左右される不安定さを露呈。火力発電もロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料の価格高騰や確保に関するリスクが高まっている。さらに電力需給が厳しくなれば、家庭や企業にも負担が生じかねない。

「電力需給は太陽光発電の出力が減少する午後5時~午後8時ごろに厳しくなる傾向がある」。経済産業省は今夏の家庭や企業向けの節電の指針で指摘する。

東京電力福島第1原発事故後、原発の再稼働が進まない中、政府は火力発電への依存を高め、太陽光発電の普及を後押ししてきた。

経産省によると、総発電量に占める電源別の割合は、事故前の平成22年度は原子力が25.1%、火力が65.4%、太陽光は0.3%。令和2年度は原子力が3.9%に激減する一方で、火力は76.4%、太陽光は7.9%に増加した。

ただ、太陽光発電は発電量が天候に左右される点が課題だ。3月22日には悪天候の影響もあり、東京と東北の両電力管内で電力需給が逼迫(ひっぱく)。初めて「需給逼迫警報」の対象となった。逆に好天で太陽光発電の量が増えすぎ、一時的に発電を停止させる「出力制御」は九州、四国、東北、中国、北海道の各電力でも相次ぐ。

火力発電もウクライナ情勢の緊迫化による燃料価格高騰に加え、ロシア産燃料の禁輸などに伴う調達リスクが顕在化している。

不安定な供給を補う対策には、需給がより厳しくなる冬を念頭に大企業などが使える電力を制限する「電力使用制限令」や特定地域を意図的に停電させる「計画停電」の検討も盛り込まれた。ただ、一連の需要抑制策は国民や企業に我慢を強いるもので、影響は小さくない。年間を通じて、電力の安定供給を可能とするために、震災後の日本のエネルギー戦略の検証と対応が急務となっている。

0コメント

  • 1000 / 1000