ロシア軍が侵攻を続けるウクライナで、取材中のジャーナリストが銃撃を受けるなどして死傷する事件が相次いでいる。15日には米FOXニュースが、同社の取材班に所属する2人の死亡を発表した。ウクライナ議会人権委員会などによると、これまでに少なくとも5人が死亡、30人以上が負傷したという。ジャーナリスト団体などからは非難の声が相次いでいる。
15日にFOXが死亡を発表したのはアイルランド人カメラマンのピエール・ザクシェフスキーさん(55)とウクライナ人の女性記者、オレクサンドラ・クフシノワさん(24)。取材班は14日、キエフ郊外を車で移動中に銃撃を受けた。この際に同じ取材班の英国人記者(39)も足を負傷して入院した。米国の非営利組織「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)によると、銃撃時、取材班の車両には「プレス」と書かれていたという。
ロイター通信などによると、ザクシェフスキーさんはロンドンを拠点とし、イラク、アフガニスタン、シリアなど多くの紛争地を取材してきた。2月からウクライナ入りしていたという。クフシノワさんは取材班の現地案内や情報収集に当たっていた。FOXのスザンヌ・スコット最高経営責任者(CEO)は声明でザクシェフスキーさんについて「深い悲しみに沈んでいる。彼のジャーナリストとしての情熱と才能は比類ないものだった」と述べた。クフシノワさんについても「彼女は非常に優秀で、自分の国で何が起きているのかを世界に知らせるために24時間態勢で活動していた」と語った。
CPJなどによると、ウクライナ人のビクトル・ドゥダルさんとエウヘン・サクンさん(49)も取材中に死亡した。また13日にはキエフ近郊のイルピンで取材中だった米国人記者のブレント・ルノーさん(50)がロシア軍に狙撃され、死亡した。
他にも記者が襲撃される事件が多数、報告されている。2月末に英テレビ局の記者ら2人がキエフ近郊でロシア兵に狙撃されて負傷。3月上旬にはスイス人記者の乗った車がロシア兵に狙撃され、現金などを奪われた。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)のオードレ・アズレ事務局長は15日、声明で「ジャーナリストは紛争時に情報を提供するという重要な役割を担っており、決して標的にされてはならない」と強調した。CPJで欧州・中央アジアを担当するグルノザ・サイード氏も声明で「すべてのジャーナリストの安全を確保し、報道機関への攻撃を徹底的に調査するために最大限の努力をしなければならない」と訴えた。
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